キッチンカウンターの高さ、110cmは高すぎ？後悔しない選び方とは

キッチンカウンターの高さを選ぶ際、デザイン性や使い勝手を考えるとさまざまな選択肢がありますが、なかでも高さ110cmという設定は、高めであるがゆえに慎重な判断が求められます。高さの標準とされる85cmや90cmと比べると、110cmは視界を遮る効果や空間のメリハリを演出する点で魅力的です。

しかし一方で、高さに後悔するケースも少なくなく、特に高さ100cmや高さ120cmと比較してどのような使い方に向いているのかを把握することが重要です。

キッチンでの作業が多い方にとっては、自分の身長に対するカウンターの適正な高さも意識すべきポイントになります。また、隣接するテーブルの高さやキッチンカウンター背面の立ち上がりの高さとのバランスによっても、空間の印象や使いやすさは大きく変わってきます。調理家電などを多く使用する家庭では、コンセントの高さも実用性に直結します。

この記事では、キッチンカウンターの高さ110cmという選択肢について、他の高さ（70cm・80cm・85cm・90cm・100cm・120cmなど）との違いや特徴を踏まえながら、後悔しないための判断材料を幅広くご紹介します。

キッチンカウンターの高さについて。110cmは高い？

高さで後悔しないために

キッチンカウンターの高さ選びで後悔しないためには、まず設置前に自分たちのライフスタイルやキッチンでの具体的な使い方、さらには家族構成までしっかりと把握しておくことが非常に重要です。

というのも、高さ110cmという設定は、日本の一般的な住宅における標準的なキッチンカウンター（85〜90cm程度）よりも明らかに高く、使用目的や利用者によっては不便さを感じたり、身体への負担が大きくなる可能性があるためです。

日常的に料理を長時間行う人にとっては、カウンターが高すぎることで腕の位置が不自然になりやすく、肩こりや疲労を引き起こす原因となることがあります。また、小さなお子様がいる家庭では、カウンターの上に手が届かないことで家族全体の使い勝手が悪くなり、コミュニケーションが取りづらくなるという問題も考えられます。

高齢の家族がいる場合には、立ち上がり動作における身体的負担や、視界が遮られることによる安全面の懸念も無視できません。加えて、カウンター上での調理器具や家電製品の使用にも影響が出る可能性があります。

このような観点から考えると、カウンターの高さを選ぶ際には単に見た目の美しさや流行にとらわれるのではなく、自分たちの暮らし方に合った高さを見極めることが大切です。設計段階で家事動線や使い方をシミュレーションしておけば、完成後に「使いにくかった」と後悔するリスクを大きく減らすことができます。

100cm・90cmとの比較

高さ100cmや90cmと比較すると、110cmはより目隠し効果が高く、スタイリッシュな印象を与える一方で、圧迫感を感じる可能性も否定できません。たった10〜20cmの違いでも視覚的な印象や実際の使い勝手が大きく変化するからです。

例えば90cmの高さであれば、調理台や作業台として最も使いやすく、多くの住宅における標準的な高さとして採用されています。立ったままでの調理や洗い物、配膳など、家事の多くにおいて無理なく作業できる高さとされています。

一方、100cmはそれより少し高くなることで、カウンターとしての用途が広がり、例えば立ったまま軽食を取る、パソコンでの簡単な作業をする、あるいは家族との会話を楽しみながら料理をするなど、調理とコミュニケーションの両立がしやすくなるという利点があります。

これに対して110cmになると、完全にバーカウンターに近い存在となり、その高さに適したハイチェアとの組み合わせが前提となります。キッチンとダイニングの間に区切りを設けたいときや、スタイリッシュでホテルライクな空間を目指したいときに適しており、インテリア性を重視する方にとっては魅力的な選択肢です。

ただし、椅子とのバランスや、立っての作業時に体にかかる負担も考慮する必要があります。高すぎると肘の位置が合わず、長時間の作業には向かないこともあるため、家族の身長や用途に合わせて慎重に検討することが求められます。

85cm・80cmとの差を検討

高さ85cmや80cmは、調理台や作業台として一般的で、実際に多くの住宅で採用されている標準的な高さです。これらの高さは、日本人の平均的な身長や生活スタイルに基づいて設計されており、長時間の調理作業や家事を効率的かつ快適に行うために適しています。

110cmのカウンターと比べると実用性に優れており、特に日常的な家事動線にフィットしやすいという特徴があります。例えば、シンクからコンロ、そして作業台への移動がスムーズに行える点や、食材の下ごしらえから盛り付けまで一連の作業を無理なくこなせる点が挙げられます。また、調理中に頻繁に道具や食材を取るようなシーンでも、体の動きが自然で疲れにくいという利点があります。

調理しながらの移動が多い方や、立ちっぱなしでの作業時間が長い家庭では、85cmの方が身体にかかる負担が明らかに少なく感じられるでしょう。さらに、一般的なキッチン用のチェアやスツールとの相性も良く、立ち作業と座り作業をうまく使い分けることができるため、利便性の高い高さといえます。

このような理由から、キッチンカウンターを主に調理や作業スペースとして活用する場合には、低めの85cmや80cmを選ぶというのも現実的で賢い選択肢です。見た目のインパクトやデザイン性を重視する場合には110cmも魅力的ですが、日々の使い勝手を優先するのであれば、標準的な高さのメリットを見直す価値は十分にあります。

高さ70cmのカウンターの用途

高さ70cmは、一般的なダイニングテーブルとほぼ同じ高さであり、座って使用することを前提としたカウンターに最も適しています。この高さは、椅子に座っての食事や軽作業に最適で、特にリビングダイニングと一体化した空間で使いやすく、自然な一体感をもたらすことができます。

70cmのカウンターは家庭内のサブテーブルや子ども用の学習スペースとしても幅広く活用できるのが大きな魅力です。例えば、子どもが宿題をしたり絵を描いたりする場所として、または親が在宅ワークでノートパソコンを広げるスペースとして利用するのにちょうどよい高さです。加えて、足元の安定感もあり、長時間座って作業をしても疲れにくいという点も利点の一つといえるでしょう。

特にスペースを有効に使いたい家庭にとって理想的であり、家族全員のニーズに応じた多目的な活用が可能です。また、70cmの高さであれば、既製品のダイニングチェアや学習チェアとも相性がよく、追加の家具を特別に揃える必要がない点でもコスト面のメリットがあります。

このように、70cmという高さは「座って使う」ことを前提とした設計に非常に適しており、家庭内での用途が多岐にわたるため、シンプルながらも実用性に優れた選択肢といえるでしょう。

立ち上がりの高さにも配慮を

カウンター背面の立ち上がり部分の高さは、キッチンとダイニングの空間を緩やかに仕切る役割を果たすだけでなく、実用性の面でも大きな意味を持ちます。キッチンでの調理中に発生する油跳ねや水しぶきを防いだり、手元を隠して生活感を軽減する効果があります。また、調理中に発生しやすい雑然とした様子を目立たなくすることで、ダイニング側から見たときの印象をよりスマートに保てるというメリットもあげられるでしょう。

ただし、立ち上がりの高さの設定には注意が必要です。たとえば、110cmのカウンターにさらに10〜15cmの立ち上がりを設けると、合計で125cm近い壁面となりますが、これは家庭用カウンターとしてはかなり高めの設計になります。標準的なカウンターの高さが85〜90cm前後であることを考えると、125cmは来客の目線を完全に遮る高さにはなりますが、その分、圧迫感や視界の遮りが強くなりすぎるおそれもあります。

立ち上がり部分には、タイルや木目パネルなどを使ってデザイン性を高める工夫も多く見られますが、その一方であまりに高くしすぎるとキッチン側にいる人の視界が狭まり、光が届きにくくなるというデメリットも伴います。特に、リビングとキッチンが一体となった対面式の空間では、開放感が失われないように設計バランスを意識する必要があります。

また、高すぎる立ち上がりは、調理器具の出し入れや配膳動作を妨げてしまうこともあります。手元が完全に隠れてしまうことで、物を渡したり受け取ったりする動作がしづらくなり、結果として使い勝手に影響を及ぼします。

このように、立ち上がりの高さは単なる目隠し以上の意味を持ち、見た目と機能の両立が求められる要素です。設計段階で一般的な高さの目安（例えば20cm程度）や、実際の使用シーンをしっかりとシミュレーションし、家族の使い方や空間の広さに合わせて最適な高さを選ぶことが、満足度の高いカウンターづくりには欠かせません。

高さの標準値はどれくらい？

キッチンカウンターの高さの標準は、前述の通り一般的に85〜90cm程度とされています。これは、日本人の平均身長（男性約170cm、女性約158cm）を基に設計されており、多くの住宅で長年採用されてきた安心感のある高さです。この範囲の高さであれば、調理や配膳といった日常的な作業を無理なく行うことができ、身体への負担も少なく済むため、家庭での使用において非常に適しています。
（参考：厚生労働省「身長の平均値、標準偏差、標準誤差及び分布」）

さらに、快適な作業台の高さを判断する基準として、「身長÷2＋5cm」という計算式がよく使われています。たとえば、身長160cmの方の場合、この計算に基づくと約85cmが理想的なカウンターの高さとなり、多くの人にとって自然な姿勢で作業できる寸法といえます。このような設計の合理性からも、85〜90cmの範囲が長年にわたり標準とされてきたのです。

この点から考えると、高さ110cmというのは標準的な高さに比べて約20〜25cmも高く、用途が大きく異なることがわかります。110cmのカウンターは、一般的なキッチン作業にはやや高すぎるため、料理の作業台としてよりも、バーカウンターや立ち作業専用のスペースとして設計されることが多く、特定の目的やデザイン性を重視した空間に向いています。

そのため、110cmのカウンターを導入する際は、一般的な使用とは異なるニーズに合わせた設計であることを十分に理解しておく必要があります。日常の家事を中心に使用する予定であれば、まずは標準的な高さをベースに検討する方が、身体への負担が少なく、快適で効率的なキッチン環境を実現しやすいでしょう。

まさかのキッチンカウンターが、ワイの立って仕事する高さにドンピシャ過ぎて泣いている笑 pic.twitter.com/qoe82LBy9o

— りなたむ(Ryota)@ITの町医者👨‍⚕️ (@Rinatamu_ITDR) April 23, 2025

キッチンカウンター、高さ110cmの注意点

テーブルの高さとのバランスに注意

カウンターとテーブルを併設する場合、それぞれの高さのバランスをしっかりと取ることが非常に大切です。高さに大きな段差があると、視覚的に不自然な印象を与えてしまい、空間全体のデザイン性を損なうだけでなく、実際の使い勝手にも大きな影響を及ぼすからです。

たとえば、ダイニングテーブルの高さが一般的な70cmでありながら、隣接するカウンターが110cmであると、40cmもの段差が生まれます。このような大きな高低差があると、椅子に座っている人と立って作業する人の目線に極端な差が生じ、会話や視線のやり取りがしにくくなります。

さらに、食事や作業を行う際の使い勝手にも違和感が出やすくなります。例えば、複数人が同時に異なる高さのテーブルやカウンターを使うとき、食器の受け渡しがスムーズにいかなかったり、飲み物をこぼすリスクが高くなることもあります。また、空間に統一感がなくなり、インテリア全体のバランスが崩れてしまうこともあるため注意が必要です。

こうした課題を解決するためには、高さを揃える工夫を取り入れることがひとつの方法です。カウンターとテーブルの高さを調整し、段差を少なくすることで空間に一体感が生まれ、使い勝手も向上します。あるいは、あえて段差を活かした設計とし、カウンターを高めに設定して視線を遮る工夫をしつつ、テーブル側との調和を図るようなレイアウトにすることも可能です。この場合は段差をうまくデザインに組み込むことで、空間に立体感を生み出すというメリットも期待できます。

いずれの方法を採用するにしても、大切なのは自分たちの生活スタイルや利用シーンに合った設計を行うことです。見た目だけでなく、実際の使用感にも配慮した高さのバランスを考えることで、日々の生活の中でストレスを感じることなく、心地よい空間を実現することができるでしょう。

高さ120cmはありか？

高さ120cmのカウンターは、家庭用としてはかなり特殊な用途に限定されるデザインであり、一般的な住宅環境にはあまりなじまない高さです。これは、一般的なキッチンカウンターの標準的な高さが85〜90cm前後であるのに対し、30cm以上高いため、日常生活での使用には注意が必要です。

理由に、対応するハイチェアの座面高が非常に高くなるという点が挙げられます。120cmのカウンターに合わせるには、90〜95cm程度の座面高が必要になりますが、この高さに対応したチェアは市販品では数が限られており、選択肢が少ないのが実情です。そのため、椅子の高さが合わず、座って使うには不安定さや不便さが伴うことも多く、家庭内での利用には工夫が求められます。

このような高さのカウンターは、主にスタンディングカウンターとして設計されることが多く、立ったまま作業をしたり、会話や接客を想定したスペースとして用いられることが一般的です。例えば、ショールームや展示場、飲食店のカウンター席などでは、高さ120cmの設計が空間にインパクトを与えるために有効に活用されています。加えて、高さがあることで自然と人との距離を確保しやすくなり、視線の高さを活かした接客にも適しています。

一方で、住宅内にこの高さのカウンターを設置する場合は、キッチンやリビングとの段差や視覚的な違和感を生じる可能性があるため、空間全体のバランスを慎重に考慮しなければなりません。また、日常的に使用する家事スペースとしては高さが合わず、腰や肩に余分な負担がかかる恐れもあります。特に、調理や配膳といった動作には不向きで、家庭内での実用性には欠ける可能性が高いです。

このため一般的な住宅においては、カウンターの高さとしては100cm程度を上限とし、それ以上の高さはデザイン性や演出を目的とした限定的な利用にとどめるのが現実的です。快適な生活動線を確保しつつ、空間のデザインにもこだわりたい場合には、無理に高さを出すよりもデザイン性と実用性のバランスをとることが、長期的に見ても満足度の高い空間づくりにつながるでしょう。

身長別に見る適正な高さ

カウンターの高さは使用者の身長によって大きく影響を受ける要素の一つです。適切な高さを選ぶための基準として、一般的には前述の通り「身長÷2＋5cm」という計算式が用いられています。たとえば、身長が170cmの方であれば、計算上は約90cmが最も快適に作業できるカウンターの高さとされています。この式は、立った状態で腕の角度が自然に保たれる位置を基に算出されており、調理や配膳などの家事を長時間行う際にも無理のない姿勢を保てるように設計されています。

これに対して、110cmのカウンターはこの基準よりも20cm高いため、身長が180cmを超えるような高身長の方であっても、やや高く感じるケースがあります。特に、頻繁に使用するキッチンでの作業や調理を行う場合には、肘が持ち上がりすぎてしまい、肩や背中への負担が蓄積されやすくなるという問題も指摘されています。

また、平均的な日本人の身長（およそ155〜170cm程度）から考えると、110cmの高さは日常的に使うにはやや高すぎる傾向にあり、長時間使用するには適していない可能性が高いといえます。そのため、こうした高さを採用する際には、自分や家族の身長だけでなく、カウンターをどのように使用するのかという点も含めて慎重に検討する必要があります。

単に見た目の印象やインテリア性だけで判断せず、身体への負担や使いやすさにも十分に配慮した上で選ぶことが、長期的に満足できるキッチン空間をつくるための重要なポイントです。

コンセントの高さはどうする？

カウンターに電源を設置する場合、コンセントの位置については慎重に検討することが欠かせません。なぜなら、コンセントの取り付け位置によっては非常に使いにくくなってしまうためです。コンセントが高すぎれば機器の配線が目立ちやすくなり、逆に低すぎれば使うたびにかがむ必要があり、日常的な利便性を損なうことになります。

たとえば、コーヒーメーカーやミキサー、電気ケトルといった家電製品を頻繁に使うことを想定すると、使用中にコードが邪魔にならない位置にあるかどうかが非常に重要です。調理の合間にサッと使いたい家電がすぐにアクセスできるように、電源の高さと配置は必ず使い勝手を第一に考えて設計するべきです。

またコンセントは単に配置するだけでなく、使用シーンに応じて複数設置することも検討しましょう。例えば、カウンターの左右両端に設けたり、USBポート付きのタイプを導入することで、より現代的なニーズにも対応可能となります。さらに、コードを目立たせないためのカバーや配線収納スペースも設けておくと、見た目の美しさを保ちつつ、安全性も向上します。

一般的には、カウンター天板から10〜15cmほど下にコンセントを配置するのが理想的とされており、この位置であれば、調理中に手を伸ばすだけで届く距離にありながら、見た目にもすっきりとした印象を保つことができます。こうした細かな工夫が、日々の使い勝手を大きく左右するため、設計段階からしっかりと計画しておくことが肝要です。

高さ110cmが人気の意外な理由とは

一見高すぎるように思える110cmのカウンターですが、実は特定のデザイン性や用途を重視する家庭や設計士の間で採用されることがあります。その背景には、単なる高さの違い以上に、空間全体に与える印象や利便性の面でメリットがあるからです。

110cmの高さは、ダイニングとキッチンをゆるやかに仕切る役割を果たすと同時に、空間に視覚的なメリハリをつける効果があります。リビングやダイニングと直結しているキッチンの場合、110cmのカウンターは目隠しの役割を果たし、調理中の様子や雑然とした手元をうまく隠してくれます。

さらに、110cmという高さは、デザイン性を重視する住宅やモダンな空間づくりにおいては非常に効果的です。特に、シンプルで洗練されたインテリアを目指している方には、空間のアクセントとしても好まれる傾向にあります。

また、背の高いスツールと組み合わせれば、カフェのようなおしゃれな雰囲気を演出することも可能であり、友人とのティータイムや家族との軽食にちょうどよいスペースとして活用できます。

ただし、調理台としての使用を想定する場合には注意が必要です。特に、長時間の作業には不向きなケースもあり、用途を「立ったままの軽作業」や「バーカウンター的な利用」に限定することで、無理な姿勢を避けながら快適な使用感を得ることができます。

このように110cmという高さには、見た目の魅力だけでなく、空間の演出や軽作業への実用性といった面でも利点があります。ただし、採用する際には使用目的を明確にし、身体への負担や空間全体のバランスもあわせて考慮することが重要です。

総括：キッチンカウンターの高さについて。110cmは選択肢にいれるか

最後に記事のポイントをまとめます。