キッチンにカップボードを設置する際、窓との位置関係や高さをどう設定するかは、空間全体の使い勝手や快適性に大きく影響します。吊り戸棚と間に窓を設けた場合、採光は確保できても収納力が犠牲になることがあり、またキッチン背面の壁に窓はいらないと感じるケースも少なくありません。
カップボードの上にFIX窓を設けるレイアウトでは、通風ができないことによる湿気やにおいの問題、掃除のしづらさが気になる場面もあるでしょう。一方で、キッチンに窓なしの設計にした結果、空間が暗いと感じてしまう方もいます。また、キッチン窓が大きすぎることで収納場所が減ったり、日差しで暑くなりすぎたりといったデメリットもあります。
快適なキッチンを実現するには、用途に応じた窓のおすすめタイプを理解し、インテリアとの調和や生活動線をふまえて設計することが大切です。この記事では、カップボード上の窓設計でありがちな失敗やデメリット、そして後悔しないための工夫を詳しくご紹介します。
- カップボードと窓の位置や高さの関係による使い勝手の違い
- FIX窓などの窓タイプごとのメリットとデメリット
- 窓の設計ミスが収納や通風に与える具体的な影響
- 後悔を防ぐためのキッチン設計とレイアウトの工夫
カップボード上の窓、失敗とデメリット

ストウデン・イメージ
- 窓の位置や高さで起きる失敗例
- 一条工務店のカップボード
- 吊り戸棚とカップボードの間に窓
- キッチン背面(後ろ)の窓はいらない?
- カップボードの上にFIX窓を選ぶ時の注意点
- キッチンは窓なしだと暗い?
窓の位置や高さで起きる失敗例

ストウデン・イメージ
窓の位置や高さを適切に設定しないと、キッチンの収納力や作業のしやすさに支障が出る可能性があります。特に、カップボードの設置高さと窓の位置が重なると、吊り戸棚や調理家電の配置に影響を及ぼすことがあります。
例えば、窓がカウンター下の位置にあると、炊飯器や電子レンジの蒸気が直接ガラス面に当たり、結露が発生しやすく、窓周辺にカビが生えたり、窓枠が劣化したりするおそれがあります。さらに、熱による変形や変色といった問題も考えられるため、設置には慎重な判断が必要です。
日常のメンテナンス性も考慮する
窓の掃除や開閉が困難になる場合もあるため、日常のメンテナンス性にも配慮することが大切です。高い位置にある窓は見た目にはスッキリしますが、頻繁に手が届かないと使い勝手が低下することもあります。デザインだけでなく実用性を兼ね備えた配置が求められます。
最適な窓配置のために
最適な窓配置を実現するには、あらかじめカップボードの大きさや設置予定の家電との関係性を考慮することが重要です。建築段階で家電の高さや使用頻度、配置位置を想定しておくことで、無理なく快適に使えるキッチン空間を実現できます。
一条工務店のカップボード

一条工務店・公式
一条工務店では、高断熱住宅の性能を活かすために、気密性や断熱性に優れた住宅構造が採用されています。カップボードもそれに調和するよう設計されており、室内環境の快適性を高める工夫が随所に見られます。ただし、このような高性能住宅において、窓の設置位置や仕様を誤ると、場合によっては冷暖房効率に影響を与えることもあります。たとえば、FIX窓を多用すると自然光は取り入れやすくなりますが、開閉ができないため通風が制限されます。
もっとも、一条工務店では24時間換気システム(ロスガード90)などが標準搭載されており、室内の空気環境は機械的に管理されています。そのため、通風の役割を必ずしも窓に求めなくてもよい場合もあります。ただし、自然換気を重視したい場合や湿気を外に逃がしたい用途であれば、窓の開閉機能はやはり重要です。
このように考えると、窓の設計では明るさと換気のバランスをどのように取るかが大きな課題となります。特に高気密・高断熱住宅では、設計上の小さなミスが居住空間の快適性に大きな影響を与える可能性があるため、窓の選定と配置には慎重な判断が必要です。
吊り戸棚とカップボードの間に窓

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この配置は見た目に開放感をもたらし、明るく広々とした印象を与えるため、インテリアとして魅力的に映ることが多いです。ただし、実用性という点では慎重な判断が必要です。理由は、吊り戸棚の収納力が落ちてしまったり、壁面に器具を取り付ける際の自由度が制限されるケースがあるためです。例えば、窓の存在によってレンジフードや棚板の設置場所が限られてしまったり、照明やコンセントの配置が思い通りにできなくなるという問題が発生します。
窓を挟む形になることで、配線やダクトの通し方に工夫が必要となり、設計や施工の手間も増す傾向にあります。また、窓があることで吊り戸棚の位置が高くなり、日常的な使い勝手に影響する場合もあります。特に背の低い方や年配の方にとっては、収納物の出し入れが不便になることも考えられます。
これを避けるためには、収納と採光のどちらを優先したいのかをあらかじめ明確にし、その上で全体のレイアウトをバランスよく調整することが重要です。見た目の美しさに加えて、日々の使いやすさやメンテナンス性まで考慮した設計が、満足度の高いキッチンづくりにつながります。
キッチン背面(後ろ)の窓はいらない?

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キッチン背面の窓は必ずしも必要なものとは限りません。なぜなら、キッチン全体の明るさは、ダイニング側の窓や隣接するリビングの採光によって十分に確保できる場合が多いためです。特に間取りによっては、背面の壁を収納や家電の配置に活用したほうが、空間をより有効に使えることがあります。
例えば、キッチン背面に冷蔵庫や食器棚、電子レンジ台などを設置することで、家事動線がスムーズになり、作業効率が向上します。しかしこのとき、もし背面に窓があると、それらの家具を設置できず、せっかくのスペースが無駄になってしまうことがあります。窓があることで壁面収納が確保できず、収納力が低下するというケースも見られます。
窓の位置によっては外からの視線が気になったり、家具の背面に隠れてしまって結局活用されないという事態にもなりかねません。そのような使われない窓は、掃除やメンテナンスの手間だけが増えてしまい、かえって不便を感じることもあるでしょう。
このように考えると、キッチン背面の壁をどのように活用したいのかを明確にし、その上で窓を設けるかどうかを判断することが大切です。視覚的な明るさと実用性のバランスをとりながら、無理のないレイアウトを目指すことが、快適なキッチン空間づくりにつながります。
カップボードの上にFIX窓を選ぶ時の注意点

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FIX窓(開閉できない固定窓)は採光性に優れており、外からの自然光をしっかり取り入れたい場合に非常に効果的です。そのため、明るく開放感のある空間を演出したい方には人気の高い選択肢となっています。また、窓のデザインもシンプルで、外観や内装に美しく調和しやすいという利点もあります。さらに、FIX窓は気密性・断熱性にも優れており、ペアガラス仕様などを選べば冷暖房効率の向上にも寄与します。
ただし、FIX窓には重要な注意点があります。それは、開閉ができないため通風がまったく期待できないという点です。例えば、換気を目的としてキッチンに設置した場合、思うように風が通らず、結果的に「開けられる窓にしておけばよかった」と後悔するケースが多く見られます。特に調理中に発生する蒸気やにおいを室外に逃がすための風通しが不十分だと、キッチン内の空気がこもって不快に感じることもあるでしょう。
FIX窓は外の音や熱の出入りをある程度遮断できますが、完全に密閉されているがゆえに窓の近くに熱がこもったり、内部結露が生じるリスクもあります。高断熱仕様であっても、窓周辺の空気の流れが滞ることで結露の原因になることがあります。高所に設置した場合などではホコリや油分が付着しても外側の掃除が難しく、業者に依頼せざるを得ないこともあります。
FIX窓を採用する際には、その設置目的を明確にすることが非常に重要です。採光を優先するのか、通風や換気を重視するのか、またはデザイン性を重んじるのか。事前にしっかりと目的を定めたうえで、他の窓種との組み合わせも検討すると、より後悔の少ない選択ができるでしょう。
キッチンのfix窓結露😮💨
シャッターある窓達にはなってなかったなー🤔
多少だけどシャッターも有効なんやね😌 pic.twitter.com/ynwpPNAjwo— キョーマ@パナソニックホームズ (@g_van_mac) December 20, 2022
キッチンは窓なしだと暗い?

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窓がないとキッチンが暗く感じる場合があります。これは自然光が入らないことで空間全体が陰りがちになり、調理中に視認性が下がるためです。ただし、照明計画をしっかり立てることで、窓がなくても快適に作業できる明るさを保つことは十分に可能です。
特に、天井照明に加えて手元灯や間接照明を適切に配置することで、作業スペースの明るさを確保できます。また、壁や天井の色を明るめにすることで、照明の反射効果を高め、空間全体がより明るく見えるようになります。
実際、近年の住宅では窓を設けない代わりに照明を工夫し、より効率的に空間を活用するスタイルも増えています。例えば、収納スペースを最大限確保したい場合や、冷蔵庫や家電の設置場所を自由に取りたい場合は、あえて窓を設けないという判断も有効です。このような選択によって、壁全体を収納や家電スペースとして活用でき、キッチンの利便性が高まることがあります。
窓の配置によって吊り戸棚が取り付けられなかったり、食器棚の高さが制限されたりするようであれば、最初から窓を設けないレイアウトの方が合理的といえるでしょう。収納力を優先する場合や外からの視線を避けたい場合など、目的に応じて最適な設計を選ぶことが、後悔のないキッチンづくりにつながります。
カップボード上の窓について。失敗やデメリットは?

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- キッチン窓が大きすぎることで困った話
- カップボード付近の窓のおすすめ
- クレスト製カップボードで後悔?
- カップボードと窓の干渉を防ぐ工夫
キッチン窓が大きすぎることで困った話

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窓を大きくすれば部屋全体が明るくなり、開放感も増すと考える方は多いですが、それによって思わぬデメリットが生じることもあります。まず、壁面の多くを窓に使ってしまうと、カップボードや吊り戸棚などの収納スペースを確保しにくくなってしまいます。収納量が減ることで、食器や調理器具の置き場に困る場面も出てくる可能性があります。
また、窓から入る日差しの量が多くなることで、夏場の室温が上昇しやすくなります。特に東向きや南向きの大きな窓では、朝から強い直射日光が差し込むため、調理中に汗をかくほど暑くなることも珍しくありません。このような状況では、冷房の効きが悪くなったり、電気代が上昇する可能性もあります。日射遮蔽対策を講じていない場合は、熱が室内にこもりやすくなり、エネルギー効率の低下につながることもあります。
大きな窓は掃除の手間も増えるうえ、高所に設置された場合は特に外側の清掃が難しく、場合によっては専門業者に依頼する必要が生じることもあります。また、外からの視線が気になるケースも多く、カーテンやブラインドなどの目隠し対策が必要になる場面も少なくありません。
窓は大きければ良いという単純なものではありません。明るさや開放感だけでなく、断熱性、プライバシー、収納スペースとのバランスを考慮することが重要です。設計段階からそれぞれの要素を総合的に検討し、自分たちの暮らしに合った窓のサイズと配置を選ぶことが、後悔のない空間づくりにつながります。
カップボード付近の窓のおすすめ

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おすすめの窓のタイプは、設置場所や使用目的によって大きく異なります。キッチンやカップボード付近に設置する場合、特に重要なのは採光性とプライバシー、そして周辺設備との調和です。例えば、高い位置に窓を設ける高窓スタイルにすることで、外部からの視線を遮りながらも、部屋の奥まで自然光を取り込むことができます。これは特に住宅密集地などで視線が気になる環境において、有効な選択肢です。
また、ガラスの種類にも配慮が必要です。すりガラスや型板ガラスを使えば、外の景色が見えにくくなりつつ、柔らかな光を室内に取り入れることができます。光は確保したいが、プライバシーも守りたいというニーズに適しています。さらに、窓の形状も重要です。横長のスリット窓や小型のFIX窓は、家具や収納との干渉を避けつつ採光を得るのに適しています。
このように、どの窓を選ぶかは設置場所、光の入り方、外部からの視線、収納配置などを総合的に検討することが必要です。目的を明確にして窓を選ぶことが、快適で後悔のない空間づくりにつながります。
住友林業クレスト製カップボードで後悔?

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クレストのカップボードは、その高いデザイン性と品質の良さから多くのユーザーに支持されています。スタイリッシュな外観やカラーバリエーションの豊富さが魅力で、インテリアにこだわりたい方にとって理想的な選択肢です。実際、住友林業クレストとして展開されており、2,250mm幅で約35万円、幅や仕様によっては90万円を超えるケースもあるなど、高価格帯の製品も存在します。
しかし、窓との相性を考慮せずに配置してしまうと、思わぬ後悔につながる可能性があります。特に高さのあるモデルや壁面を大きく占有するタイプでは、窓の位置と干渉しやすくなる傾向があります。例えば、FIX窓やスリット窓がカップボードの上部にある場合、カップボードの高さと重なってしまい、光が入りづらくなったり、見た目のバランスが崩れたりすることがあります。さらには、せっかくの窓が隠れてしまって使用されない「死に窓」になってしまうこともあります。
また、カップボードの背面に設置する配線や換気口との位置関係も考慮しないと、施工時に追加の工事やレイアウト変更が必要になる可能性もあります。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、あらかじめ窓の高さ・幅・位置とカップボードの寸法を細かく確認し、図面上でのシミュレーションを行うことが重要です。その上で、設計士や施工担当者と十分に相談しながら、全体のバランスや動線を確認することで、より納得のいくキッチンレイアウトが実現できます。
カップボードと窓の干渉を防ぐ工夫

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干渉を避けるためには、前述の通り窓の高さと幅をカップボードのサイズや形状にしっかりと合わせることが大切です。カップボードと窓の位置関係が不適切だと、窓が家具にかぶってしまったり、開閉の妨げになったりすることがあります。
例えば吊り戸棚を設置したい場合は、窓を上部に寄せることで棚の設置スペースを確保できるほか、収納力も維持しやすくなります。また、スリット窓のように横長でコンパクトな窓を選べば、採光と機能性の両立が図れます。
さらに、開閉式の窓よりもFIX窓を選択することで、窓を開け閉めする際の干渉を避けることができるため、特に狭いスペースでの設置には有効です。FIX窓は開閉が不要な場面ではデザインの自由度も高く、採光を確保しつつ壁面の活用を妨げません。ただし、FIX窓の仕様によってはフレーム幅やサイズに制約が生じることもあるため、製品選定時には注意が必要です。また、換気が必要な場合は、別の場所に通風用の窓を設ける必要があります。
設計の初期段階からこれらの点を意識しておくと、後々のレイアウト変更を防ぐことができ、施工や設置において無駄な手間やコスト(例:配線やダクトの再調整、家具の再設置費用など)を省くことにもつながります。窓とカップボードの干渉を防ぐ工夫は、日々の使い勝手に直結するため、設計時にしっかりと検討したいポイントのひとつです。
カップボード上の窓における失敗やデメリットについて総括
最後に記事のポイントをまとめます。
- 窓の高さとカップボードが干渉すると収納力が大きく落ちる
- 窓の位置が低すぎると蒸気や熱で結露や劣化が起きやすい
- 窓と家電の配置関係を考慮しないと使い勝手が悪化する
- FIX窓は通風ができず換気面で後悔することがある
- 掃除やメンテナンスがしにくい窓位置は長期的に不便になる
- 吊り戸棚と窓の配置次第で収納の高さ制限が発生する
- キッチン背面の窓は収納や家電配置を妨げる場合がある
- 窓のサイズが大きすぎると断熱性が下がり光熱費が増える
- 高所の窓は掃除がしづらく業者依頼が必要になることもある
- デザイン重視で配置すると実用性が犠牲になるケースが多い
- クレスト製のような大型カップボードは窓との干渉が起きやすい
- 窓の選定ミスは設計変更や追加工事の原因になりやすい
- 窓があると配線やダクトのレイアウトにも制限が出る
- 採光だけでなく通風・収納・動線の総合判断が必要になる
- 設計段階から家電や収納の寸法をもとに窓位置を決めるべき